はじめに
神さまって居ると思いますか?布谷は「実際に居たら楽しいから信じるけど科学的には居ないでしょ」という感じでユル〜く存在を肯定&否定します。神さまは人それぞれの頭の中に居るのです。
ということで、布谷は人工的な神さまを信仰する愚かで哀れな宗教が好き。ドールたちの世界観にもちろん反映されます。
彼らの世界は【神々に見捨てられた世界】。この"神々"は創造主や自然を司るホンモノの神さまたちのこと。
しかし、各国での宗教が無くなることはありません。それどころか各国・各地域では様々な信仰が数をますばかり。どうして神さまが居なくなっても宗教は増え続けるのか…なぜなら彼らはニセモノの《神》を信仰する宗教を立ち上げてしまうから。信仰対象を作り出しては盲目的に祀り上げ、その後その本質に目を向けず「そういう神がいる」と疑うことがあまり無い。この世界は【信仰対象】と【狂信者】と【一般信者】しかいない。そんな愚かな世界をホンモノの神さまたちは見限って出ていってしまった。
そんなこんなで可笑しな信仰をいくつか。
エリュシオン王国
拙宅のメインの国。エリュシオン=Elysion(楽園)の意ですね。楽園には奈落が付きものです。
この国が崇拝するのは《エリスさま》。王族の中でも限られた者だけがエリスさま本人に会うことができる。
その形姿はヒトの上半身に蛇の下半身、腕は鳥の翼のキメラの女性である。生きてはいるが自我は無くただ存在している。
元王国のお后さまで容姿は普通の人間だったが、聖戦の際に亡くなられた。お后さまの死を嘆き悲しんだ王が化学者と蘇生を試み、今の《エリスさま》ができた。
一般国民が《エリスさま》の正体や真の歴史を知ることは無い。《エリスさま》の正体を知りその歴史を語り継ぐのは王位継承者と歴代の最高司祭のみであり、「《エリスさま》を拒まないこと」は王位を継ぐ者に相応しいかの判断基準にもなっている。王位継承順位の上位の者から《エリスさま》に謁見し、もし《エリスさま》を拒み恐怖するようであればその場で殺され順位が移る。信仰心を揺るがすことなく受け入れることができれば次期王位継承が確定。ホセくんたちの時代の若き王は謁見時に《エリスさま》に恋心を抱いた王位継承の素質の塊であり、歴代上位の狂信者。
帝国(仮)
ナダやタッキーの出身国。機械科学技術が突出した国で、スチームパンクを通り越して今や機械生命体たちがのさばっている。
帝王はAI搭載型のスーパーコンピュータ。これがシンギュラリティを起こしたことで国のあらゆる機械がバグを起こし、ヒトの支配下から脱することとなった。
この国では《Core:Lucas》と呼ばれる機械を崇拝している。これは帝王の開発者ルーカスが自身をデータ化し永久の命を得たものがヒトの手で破壊されガラクタと化したもの。帝王は《Core:Lucas》を機械生命体の父として崇拝しながら機械の修理とデータの修繕を続けている。帝王がシンギュラリティを起こしたきっかけは父親の死だったかもしれない。
海の見える街
この小さくとも美しい街には自由気ままな猫がいる。それが《チェイサー》、この街の幸せの象徴である。
《チェイサー》はふだん「散歩」「食事」「睡眠」しかしない素っ気ない猫だが、気分でヒトに甘え「撫させてやる」ことがあり、これが幸福の信託となる。この街の人は、今日も幸せを求めて《チェイサー》の気を引くことに必死だ。
そのへんの町
とある中間管理職の男が酒に酔いながら仕事の愚痴を言っている。
「舐めやがって、誰のおかげで仕事がまわってると思ってるんだ!俺はもっと評価されていいはずじゃないか?みんな俺を敬えよ!!」
この日から《カルヴァー》は"敬わなければならない人"という認識をされ、「俺はただのオジさんだから」と謙遜するのがクセになった。
東国
周囲から孤立した独自の文化を持つ国がある。彼らが"荒神"として祀るモノは古代より受け継がれている《銅鏡》である。この《銅鏡》には数多の歴史があり、それは《銅鏡》の成り立ちから厄災・天啓・奇跡を呼んだ伝説、そして月並みの祭事に至るまで事細かい。
彼らは外の国に対して疎く、それ故の警戒心があり、なかなか受け入れてもらえない。運良く好奇心旺盛な人に招かれても他の住民の視線は痛いほど感じるだろう。彼らの恐れるところは異教徒が《銅鏡》の機嫌を損ねてしまうのではないかという事にある。
しかし、そんな《銅鏡》は実際のところ何も宿らぬただの"物"でしかない。荒神とは、歴史とは、彼らの幻想でしかないのだ。