小さなお手伝いさん
小さなドレスたちが積み上がるテーブルの上。
わたしの探し物を両手で抱えた少女人形が
じっとこちらに流し目を送っている。
負けじと見つめ返してみるも、
その紫水晶のような静かな煌めきには敵わない。
こうなってはこちらの負けだ。
「気をつけるんだよ」と一応声をかけると、彼女は
分かっているのか分かっていないのかも
分からない、そんな表情で
周りのドレスをひとつ、持ち上げてみせた。
少女人形たちの服の手入れをしようと思い至り、
収納からいくつか取り出してきたところ、
彼女の興味を惹いてしまったのが、事の発端だ。
ただの水の霧吹きとはいえ、
彼女にかかってしまったらどうしよう……と
気が気でないわたしに、
それなら、と云わんばかりに両手を出してみせる。
なるほど、水で濡らす役を任せれば
万が一の事故はないのかもしれない。
しかし、その大きさのスプレーを押し込むのは
彼女にとって、なかなか骨が折れやしないか……?
・
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涼しい顔で作業を終わらせた彼女に、労いの言葉と、
「何か着てみたい服はある?」と尋ねてみる。
……じゃあ、これ
言葉少ななに彼女が示したのは、
この子がこの棲家《へや》に来たとき
初めて着替えたコスチュームだった。
今日も今日とて夏日だというのに、
長袖のブラウスに、ケープまで羽織って、
なおも涼しそうな表情をしている。
それでも、どこか満足そうな、
あるいは心地よい疲労感に浸るような、
そんな感情を両眼にたたえていた。
彼女が来た真冬の匂いが、ふと思い出される。
「また秋になったらお願いね」と笑いかけると
わたしにしか分からないような
小さな表情の変化で、返事される。
了
2022.08.22
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あとがたり
月替わりでプロフ画像を変えよう、ついでになんかSSっぽいの書いてみよう、という試み第3回目でした。
今月はシュカ。
気がつけば8月も終わりそうです。コンスタントに何かを出すのは、難しい……
シュカは他の子達以上に、何を着ても似合う娘という印象があります。
いつかファッションショーもお願いしたいところですね。
写真に写っているお洋服たちは、いずれも愛用させていただいているお洋服となっております。
ディーラーの皆様のおかげで、うちのお嬢たちは今日も今日とて一段と可愛い。頭が上がりません。素敵なお召し物を、いつもありがとうございます。
私が住んでるあたりでは、夜などは少しずつ過ごしやすい気温になってきています。日も、ゆっくりと短くなっていくのを日に日に感じるところ。
残暑が続きますが、オーナーの皆さま(そしてドールちゃんたちも!)、どうぞご自愛くださいね。