小話

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雨の日のお迎えは

「雨…降りそうだね」
晴れやかな朝とは程遠い曇天を窓越しに見上げた。
兄たちは仕事に出かけており、今居るのは自分と妹たちだけだ。
「お兄ちゃん傘持ってるかな?」
「玄関においてあったよ、傘」
セドがもうすぐ夜勤から帰って来るのだが、このままだと雨に降られてしまう。
迎えに行こうか、と妹たちに問うと飛び跳ねて喜んだ。雨具に着替えてくると部屋に駆け出す双子を見送りながら末っ子にも問いかける。
「レマも着替えようか」
「…うん」
双子たちが着替えてる間に末っ子を着替えさせる。自分はとりあえず傘だけでいいのであとは双子を待つばかりだ。
「「お兄ちゃん、お待たせ〜!」」
元気よく現れた双子は色違いでお揃いの雨具で現れた、とてもよく似合っている。
「それじゃあ行こっか」

「あちゃー…しもた、降ってきよったなあ」
夜勤明けで帰宅途中、ぽつりぽつりと空から雫が落ちてきた。走れば間に合うだろうかという判断はあっという間に本降りになった雨によって消える。
「様子見するしかないな…」
近場の店の軒下を借りて様子を見るも特に勢いが弱まるような気配もなく、ずぶ濡れ覚悟で帰るかと思案している時だった。
「お兄ちゃーん!!」
聞き覚えのある声を、4つの耳が拾い上げる。
辺りをよく見ると、カラフルな傘が段々と鮮明に現れて来て、赤と水色のシルエットが駆けてきた。
「おむかえにきたよ!」
「すごい雨だよね、お兄ちゃん大丈夫だった?」
双子の妹たちは雨にも負けず元気いっぱいだ。次いで現れた弟は背に末っ子を乗せている。
「雨、降りそうだったからさ」
「おにいちゃん、カサ…」
末っ子は握っている自分の背丈より大きな傘を差し出してくる。それを受け取りお礼を込めて皆の頭を撫でるて、それぞれ反応は違うが嬉しそうだ。
「ありがとさん、助かったわ!ほな、うちに帰ろか」
双子を背に乗せ、弟と並んで歩いて帰る道のりは、冷たい雨などものともしない暖かさに溢れていた。

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