沙羅と双樹のおはなし

沙羅と双樹のおはなし

沙羅と双樹の関係

人と神の間に産まれた姉妹。
双樹は神の力を継いだが、沙羅は少し精霊が見える程度の能力しか継がず、そのことをコンプレックスに思っていた。
双樹は神の力が強いせいか人と感覚が違い、感情の機微にも疎い。
何でも許し、包み、浄化する。
沙羅はそんな姉を見て育ち、自分の感情の波、渦を抑えつけるようになる。
そうして時は過ぎ、沙羅の20歳の誕生日に変化は起こる。

沙羅の堕天

20歳の誕生日の前日の夜、沙羅は何かに呼ばれるように森の中へ足を進める。
その先にある湖に立っていたのは見たことも無い黒い翼を持ち、黒い肌の精霊だった。
精霊は言う。
「姉の隣に並びたいんだろう?」
自分の心の内を見透かされた沙羅は動揺する。
精霊はさらに続ける。
「君の神の力は解放されてないだけさ。俺の力を使えばそれを解放できる」
沙羅は震える声で答える。
「…本当に、力を手に入れられるの?」
精霊は言う。
「ああ!簡単にね!さあ俺の手を取って、目を閉じるんだ」

迷うはず無かった。
ずっと遠くに感じていた姉と並んで行ける。
大好きで、眩しくて、そしてほんの少し傍にいるのが苦しかった姉に近づける。

沙羅は、そっと精霊の手を取り目を閉じた。

精霊が、闇の精霊とは知らずに。

そして

沙羅の誕生日の朝。
いつもは神域で暮らす双樹は久しぶりに人界の沙羅の部屋を訪れる。

「おはよう、双樹。いい朝ね。」
今まで見たこともないような晴れやかな笑顔で挨拶する沙羅。
双樹はその姿を見て言葉を失う。

亜麻色の髪は白く、その頭には赤い角。
そして、その背には自分とは真逆の黒い翼が生えていたのだ。

「沙羅…?沙羅なの…??」
「久しぶりね双樹」

「どうしたのその髪…角まで…」
「ふふ、どうしたの双樹。」

「その黒い翼…まさか…そんな…」
「双樹?ふふ、さっきからおかしいわ」

「ああ沙羅…どうして…なんで…」
「(あなたに近づきたかったのよ、“姉さん”)」

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