♪〜♪〜…
覚えのある歌が聞こえる…
どこかで、はるか昔に聞いた歌。
月か、あるいはあの街か…
どこかで聞いた子守唄。
誰が歌っているのか…
と言っても、なんとなく見当はついている。
ゆっくりまぶたを開ける。
そこにいたのは、幼い私。
「あ、えっと、おはようございます…。」
「おはようございます。…そんなに申し訳なさそうにしないで。」
彼は安心したかのように微笑んだ。
「あなたを見ていたら、この歌を思い出したのです…。」
「その歌は、どこで聞いたのですか?」
「……思い出せないです…ごめんなさい…。」
彼はしゅんとしてしまった。
私は大丈夫と、彼の頭を撫でる。
私も聞くまで忘れていた歌。
確かに覚えているのに、どこで聞いたか思い出せない。
月なのか、あの街か…
遠い記憶の子守唄。