小話

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小さな勇気大きな一歩

「あ、あの…兄さん、お願いがあるの…」
始まりは、末弟の勇気を出した一言だったの。

「…お仕事大丈夫、なの?」
「心配しなくても大丈夫よ〜、今日はもうお仕事は終わったの。だから今は思いっきり楽しんじゃいましょ!」
半休を貰って、今はヤノと街のカフェでお昼を楽しんでいる。たまにはこういう皆ではなく誰かと、というのも楽しいものでアタシはこういう機会があれば凄く楽しいし嬉しくもある。弟たちの成長ぶりを見る事が出来るもの。
今回のお出かけも、ヤノの一言がきっかけだった。
「それで、買いたいものは決まったの?」
「えっと…その、お花を渡したい、の…女の子だし喜んでくれる、かなって…」
ヤダ…アタシの弟凄く可愛い…知ってるケド。
なんでも、お使いの時に落としてしまったものを同い年ぐらいの女の子に拾ってもらったお礼をしたいみたいなの、かわいいわよね。
少しお話したみたいなんだけど、どうやらその子はこの街に引っ越してきたばかりでまだ友達少なく場所もよく分からないみたいなの。
そして今日の3時に街の大きな公園で会うことになったみたいだから、その時に渡したいみたい。
「それじゃ、お花を買いに行きましょうか。お兄ちゃんのとっておきのお店があるわよ〜!」
「うん!ありがと、お兄ちゃん…」

お客様からご好意でいただく花の中に、長持ちするからと生花ではなく特殊加工された花々を下さる方がいて前にお店を教えてもらっていたの。
散ってしまう儚さも嫌いじゃないけれど、こちらの方が良いと思ったのよね。
キラキラと輝く花々に、ヤノは目を輝かせている。元々自然が好きな子だから、気に入ってくれたみたいで良かったわ。
「これに、する…」
ヤノが持って来たのは、小さな花がいくつも付いたオレンジの花。リボンで可愛くされたその花を嬉しそうに持っているヤノはとても可愛い。
買い物を済ませて公園まで送る途中、ヤノが袖を引っ張るので屈んで目線を合わせる。
「あの、ね…ぼく1人じゃお花…買えなかった。お兄ちゃんのおかげだよ、ありがとう…!」
「アタシこそ、楽しい時間をありがとう!お花を買いに行けたのはヤノの勇気の力よ、凄いわね」
頭を撫でる合間に覗く表情は、照れているみたい。
「さ、そろそろ時間だわ。行ってらっしゃいヤノ、頑張ってね!」
「うん、行ってきます!」
駆け出すヤノの先には、1人の小柄な女の子。
その髪はヤノが選んだ花のように、とても綺麗なオレンジ色をしていた。

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