小話

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シィアが家族になるまでに

街の飲み屋街が賑やかになる時間帯、起きている子供は少なく家の中の子供たちは夢の中だ。
「なあ、兄貴ら。ちょっと相談があるんやけど」
大人の話をするには丁度いいと切り出すと、特に構える事もなく兄達は席に着いた。
「改まっちゃって…さあさ、話てごらんなさいな」
「どんとこーい!!」
そのいつも通り過ぎるというか、そのマイペースさにはいつも感謝している。こういう時に凄く助かるのだ。
「どっから話たらええんか…まあ、結論からゆーたら1人うちで引き取れんやろか?ってな相談やねん、兄貴の息子のエニーの時みたいに」
話を振られた兄たちは暫く顔を見合わせてた後、詳しくとだけ俺に短く伝えた。態度は変わらないが、目は真剣にこちらを見、話に耳を傾けている。

ひと月前に3つ離れたこちらより大きな街の機動隊から応援要請があり、参加する事となった。しばしばある事で、大きな事件だったり祭りの警備だったり要件は様々だ。
今回呼ばれた件は闇オークションへのガサ入れだった、同期のアリカと組んで潜入した先は情報よりも多く、賑わっていた。
会場の話に耳を傾けていると、入手したリスト以外に飛び入りの目玉があるようで皆一様にそれを狙っている様子だった。

ーーそれは、オークションのラストに壇上に現れた。

「なんや、あれは…」
「綺麗…」
俺もアリカも思わず息を飲んだ。
それは今まで見た生き物の中で間違いなくダントツに綺麗であった。
その生き物は、身体が宝石のように煌めく女の子だった。
「皆この子が目当てなのね…始まったわ!凄い勢いだけど、私達も負けてらんないわよ!」
「任せろ!んじゃあ後は予定通りに、ほうら更に500万追加や!!」
結局競りは破格の値段を申し付けた紳士の勝ちではあったものの、全ての客や品物は押さえるので問題はない。
そう、問題はこのキラキラした女の子だった。
とりあえず保護をした、これはまあ当然の事なのだがここからが大変だったのだ。
まず、名前が分からない。分からないどこか声があまり発せず意思疎通もままならない。
種族が近そうな先輩にも協力してもらったが…結局何も分からず終いのまま、一時保護期間のタイムリミットが近づいてきた。
その間に引き取り手は個人やボランティア、様々な人物が現れたが中々決まらなく、彼女が他人に対して怯えるためうまく行かなかった。
機動隊のメンツには少し慣れたようで、少しずつだが声が出て話せるようになったため、機動隊メンバーで誰かいないかという話になり、俺にお鉢が回ってきたというわけだ。

「ってワケなんやけ、ど…って…どしたん?」
満面の笑みで微笑みかけてくる兄に思わず一歩引いた。
「話を聞かせてもはったからには放っておけないよねえ、兄さん」
「勿論よ!さあさ、今日はもう寝ましょ。それで、明日弟達にも話しましょう、家族が増えますってね♡」
「ああ、ホンマ兄貴らはもう…おーきにな!!」

保護期間終了まであと1週間の出来事だった。

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