翡翠の話。

翡翠の話。

翡翠さんとは

翡翠さんとはLUNAヘッドの子で、青い目が特徴。
そして、うちのこ内でもかなり過去が判明してる子。
ちょっとだけ重めの過去。
その備忘録としてメモしておく。

翡翠さんの過去

翡翠さんは石ケ森家の次女として生まれた。
石ケ森家は石材で財を成している家系。
(現在は都城グループ傘下の一つではあるものの、傘下グループの中でも指折りの業績を誇る)
結婚指輪から墓石まで。
慶事弔事に石ケ森。
石といえば石ケ森。
そんな感じの家の次女として生まれた。

翡翠さんは病弱で、ベッドの上にいる方が長いような幼少期を過ごしていた。
ベッドの上から離れられないので勉強だけは出来たが、他は何も出来ない。
次女とはいえ石ケ森家として内外に奔走しなくてはいけないのにこの病弱ではと周りは陰口をし、それが耳に入ることでどんどんと気弱になってしまっていた。
自分なんかいない方がいいのだと。
そんな未来に絶望しているような幼少期を過ごしていた。

翡翠さんの姉

翡翠さんが次女ならば、長女がいる。
長女の名は琥珀と言った。
青い目をした翡翠さんと、黄金色の目をした琥珀さん。
双子だった。

黄金色に輝く瞳が未来を照らしているようだと、王の字を持つ宝石である琥珀の名を付けられた琥珀は、太陽のように明るい子だった。
天真爛漫でいて活発で、翡翠に無い所を全て持っていた。
けれども、底抜けに頭が悪かった。
翡翠がただ一つ持っていた学力を、琥珀は一切持っていなかった。

琥珀さん。

琥珀はいつも言う決まり文句のようなものがあった。
「虎は何故強いと思う?元から強いからよ!琥珀さん最強!」だの
「虎は死して皮を残す。人は死して名を残す!私は石ケ森家の歴史に名を残すのだ!」だのである。
学力が無い所をこの2つだけは好んで決まり文句としていた。

神経衰弱でも指相撲でもババ抜きでもかけっこでも、テストの点数以外では全てにおいて翡翠に勝っては前者を言い、そして後者を言うのである。

琥珀は自笑しがちな翡翠をいつも支えていた。
私は体力バカだけど頭がバカ。
翡翠は体が良くないけど頭は超天才。
だから二人で頑張ったらもっとこの石ケ森家を大きく出来るね。
だからずっと一緒にいようねと毎日のように話しては笑っていた。
琥珀がいてくれたら生きていても良いのかなと翡翠は思っていた。

別れ

琥珀と翡翠が16になってすぐ、翡翠の病気が急激に悪化。
いくつかの臓器を一刻も早く臓器移植をせねば助からないというような状態になった。
ドナーを見つけるのにも時間はかかる。

けれども翡翠はすぐに助かった。
何故か。
病状が急変し入院した日に琥珀が転落死。
その臓器が適合したからだった。

翡翠はその後病気も完治。
人並みどころかそれ以上に健康になり、20を過ぎ石ケ森家当主になっている。

琥珀さんの力

琥珀さんには未来視の力があった。
それは可能性の未来を覗き見て、その中の理想の未来を選び取る事が出来る力だった。
だからこそ幼少期からババ抜きや神経衰弱では負け知らずだった。

けれどもその力は必ずしも自分に都合の良いだけの力ではなかった。
翡翠と一緒に石ケ森家をもっと大きく出来るかなぁ。私達はどんな大人になるのかなぁと、いつもより遠くの未来を見てみようとした日。
その日は絶望を覚えた日になった。

16歳の誕生日までの未来しか見えないのである。
自分は内容の細かな違いはあれ結果高所からの転落死。
それを知った翡翠は激しく動揺し、病状も悪化。
その後翡翠もひと月もせずに苦しみ死ぬという未来。
可能性を探して30通りほど2人の死に様を見た時に心が折れそうになり気絶し、目覚めた時には泣き腫らしていたのが小学生のある日だった。
余りに重い未来だった。

たったひとつの道しるべ

それでも諦めずに可能性の未来を何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し見た琥珀は、ようやく翡翠が生き延びる可能性の未来を見つける。
しかしようやく見つけたその未来にも自分はいない。
それでも自分の肉体が翡翠を生かしてくれる。
しかしそれでも当時小学生の琥珀がその折り合いをつけるには時間がかかった。

外には自分を強く見せる為に虎はもともと強いのだと言い、内には自分は死しても翡翠に元気な内臓を残していく事が出来るのだ。そしてあの優しい翡翠なら、ずっと私のことも覚えていてくれるだろうと自分を奮い立たせた。

虎は何故強いか。元々強いからなのだ。
虎は死して皮を残す。自分は死して翡翠の命を守る。

石ケ森翡翠

翡翠は琥珀の力のことを全く知らなかった。
絶対に自分に見せてくれなかった日記帳。
1人になった翡翠が初めて読んだその中に真相は書いてあった。

1人で絶望し、悩み、苦しみ、それでも私のことを最後まで考えていた姉の事がその中には書いてあった。

「2人なら石ケ森家をもっと大きく出来るね」
「だからずっと一緒にいようね」
その幼い日の約束を胸に今日も翡翠は日夜仕事に邁進している。

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