ビロードの話

ビロードの話

ビロードって結局何なの?

 常、この私蟻蘇19号は思い悩む。
 日ごろ見上げる先に佇む天使を姿を眺めては、これが本当のビロードなのかと。
 彼のために翼を編み上げた。彼の仲間も作り出した。私の好きな作品のコンセプトアートに準ずる衣装も揃えた。だが、それは単なる作品の模倣に過ぎないのではないかと。

 私の最も愛するドール、ビロード(SDM-64PSホワイト)は今やインターネット文化の上では衰退の道にあるアスキーアートを擬人化、あるいはドール化した存在である。

「ああ、はいはいいつものキャラド屋さんの長文語りね」

 そうだ。たしかにそうである。
 だが、あえて私はそうじゃないと言わせてほしい。

 それはなぜか。アスキーアートに原作は存在しない。インターネットの海に流れるレスの中に埋め込まれた数バイトの記号形成による文字列。それがアスキーアートだ。
 それには明確な外見もなく、人格もない。ただインターネットの海の中で積み重ねられた歴史の中、ただ曖昧なキャラ付けと定期がされてきた存在にすぎない。
 つまり、単なるキャラクターとして捉えるには非常に曖昧な存在であり、明確なキャラクターが定まっていないというのが問題なのだ。
 インターネットの集合知、あるいは共感覚めいた完成により色を与えられ、キャラ付けを行われ……しかしそのうちのどれもが間違いでもなく、正解でもない。それがアスキーアートだ。

 この「インターネット文化の中に生まれたアスキーアート」をドール化するにおいて、まず初めに説明する必要があるのが私の長年愛する「ブーン系小説」という文化だ。
 このブーン系小説はかつては2チャンネルのVIPシベリア、今はしたらばの創作版等で掲載されるインターネット小説の中でも( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ川 ゚ -゚)('A`)←こういった顔文字を使い、台本形式での小説をスレッド内に透過することで掲載される形式のものを取る。
 そしてブーン系小説のもう一つ特異な点として、いわゆる「スターシステム」を採用していることだ。
 平たく言えば作品1の登場人物( ^ω^)と作品2の登場人物( ^ω^)は同じ内藤ホライゾン、つまり( ^ω^)でありながらまったく別の人格を持ったキャラクターとして扱われることになる。

 つまりブーン系小説の登場人物は皆インターネット上の無数の解釈を凝縮した統合意識となる。
 私はこの観点からビロードを一つのドールとして再現することはあまりにも短絡的でおこがましいと考えた。だからこそ、美しさや愛らしさ、また不可侵のものであるという事を表す【天使】、人、あるいは鬼という傲慢さや悪意を抱えた姿の【人間性】、そして人格の不整合による矛盾や不条理を表現した【サイコ】。
 この三つのドール全てを総括して私は『ビロード』という存在をドールで表現している。

 そもそもビロードももっとも汎用的な名前というだけで実際の呼称すら無数に存在する。わかんないですとか高桑とかみつおとか。それらをベースに作品の中でまた更に稚内だの稚菜だのとあらゆる名を与えられてきた彼(あるいは彼女)を、たった一つの人形で表現できるだろうか。
 できないだろう、そうだろう。私は特定の作品のビロードを生み出したいのではなく、私の愛してやまない『ビロードそのもの』を生み出すことを目標としているからだ。

↑ここを読み飛ばした人に一言で説明すれば要するにlainの玲音とレインみたいなもんです。以上。

 で。

 別にドールオーナーでブーン系小説に造詣が深い人なんていないと思うので(どちらも非常に相反する文化でありそもそもドールと違いブーン系は現在進行形で廃れまくっている文化なので……いたら連絡ください。私は孤独です)その辺はいいとして。

 とりあえず原初のビロードを紹介しましょうか。話が長くなったので写真とか見たいでしょ。

 かわいいねえ。これが初めてビロードに出会えた日の写真。
 お迎えドレスのデザインが気に入らなかったのでフルチョイスの時には下着しか買わなかったんですが、その日は窓でお迎えした後しばらく家に帰れない予定があったのでせめて寝間着にと買っておいたネグリジェとドロワーズを持ってきたらそのまま撮影会にしゃれ込むことになってしまい大慌て。良かった。服持ってきてて。

 実はこのフルチョイスがはじめてのドールのお迎えで、全くドールに対する事前知識がないままでのオーダーでした。とりあえず資料は集められるだけ集めて持っていこう、フルチョイスハンドブックで目星をつけたヘッドを話してどれがいいか最後まで悩んだんですが、やっぱり今あるヘッドならこれが最良と64番ヘッドを選択。64という数字が好きなのもあり非常に気に入っています。
 このヘッド、あんまり他に持ってるオーナーさんがいないので持っている人が今年のコーディネートモデルの64番実装で増えるといいですね。増えてください。お願いします。

 フルチョイスのオーダーでとにかく重視したのが「人間性の欠如・神聖」「顔色の悪さ」「天使」「人ならざる者」というイメージでした。ただイメージだけで話してもどうなるかわかったもんじゃないので必死にボークスのインスタからめぼしいメイクの写真をかき集めて持っていきました。
 その後それなりに知識がついて気付いたのですが、インスタに乗ってるドルフィーの写真ってほぼワンオフ-メモリアルワンオフなんですよね。アイラインは過去のドルパのワンオフに出た幼眠鳥のものを採用、目の下に緑のチークを入れてくれというオーダーもいつだかのメモリアルワンオフのメイクを参考にしたものでした。資料はお渡ししてしまって今はどれがどれか分からないんですがとにかくその二点だけは重点しました。

 ちなみにグロスや血色めいたメイクはやめてほしいこと、チークも極力薄くしてほしいとオーダーしました。DAさんにはチーク入れないんですか? 入れた方がいいですよと言われるがまま推奨ダークメイクの感じで少し軽めにとお願いしたら結構ついててびっくりしました。今思えば別に無くても良かったかもな。

 二重関節を諦めてまですわりっこ足にした甲斐があるなとこの独特な座りポーズの良さに感涙しました。本当に自然にしなが作れるんだね……かわいいね……

 それから個人的にウィッグが気に入らない(少し髪が薄いのと髪質が痛んでる感じがする)のでウィッグを変更。襟足や前髪をひそかに自分でカットしています。

 これはお迎えセレモニーですね。ボークスのドールはそういう文化があるというのを知ってすわ参らんと行ってきました。ダークな結婚式みたいな感じですかね……とだけスタッフの方に言われていたのでどんなだよ……と思い参加。

 この時期はハロウィン仕様の降臨台になっていて上を覆うヴェールが黒でした。白い羽と白いヴェールのビロードとすごく良い対比になってると思います。

 この羽はビロードがやってくる前に美しい天使の羽を作ろうと思い3つぐらい作った中で唯一きれいに出来たものです。ほかにできたものは関節の可動部が大きすぎて自重で耐えきれなかったり逆に大きすぎてきれいに曲がらなかったり……天使の羽ばたきを再現するために可動性と耐久性、そして美しさを追求し続けた日々でした。このあたりからドールのためになんか作る日々が始まりましたね。

 丁度この時期には既にユノアクルスをお迎えしてボディメイクやメンテナンスの知識があったのでパーティングライン消しやUVカット処置、ボディメイクを施しています。ささやかながら爪にも白を入れています。クリア系よりマット系が好きなのであえてクリアは入れませんでした。
 何年も前のボディと比べてパーティングラインの薄いこと薄いこと。最近の技術はすごいなーと思いながらにんまりと作業していました。楽しかったね。

 次はもう一つのビロードの話をしたいと思います。そのうち。

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