ビロードって結局何なの?②

ビロードって結局何なの?②

次はもう一つのビロードの話をしようかな。
 初めは制作過程に関する話なので興味がなかったらすっ飛ばせばいい。逆に黄変カバーや塗装周りの話が聞きたければこれを読めばいい。そういうのに興味があるなら。

※ボディのバラ画像やノーメイクヘッド画像を含みます

 もう一人のビロードは【人間性】を司るビロードだ。傍目には本当にSDか?と思われる子の姿にもいろいろ理由がある。

 これが来た時の姿。箱を見る限り初回限定版のMSD組み立てキット(こはく)のはずなんだけど何故かメイクはひすい。ボディはMSDBoyボディだしヘッドは同じだから問題はないけど一緒についてたウィッグもひすいのものだったので中古だからどこかで取り違えられたのかもしれない……。数奇な運命を持つ子。

 そして何よりすごい黄変!ヘッドの刻印を見る限りこれより先に来ていた15年モノのユノアクルスよりもよっぽど長い年月を開封済みで過ごしていたわけだから覚悟はしていたが……なるほど。
 でも全然かわいいな。何しろ元の造形がいいからね。

 ここでTwitterにて有用なインストラクションを得る。
『黄変カバーにはパンパステルなど!』
 ……なるほど。同じ14番ヘッドオーナーの方より得た助言だった。
 こうして私はパステルによる黄変カバーを覚えた。

 確かにパンパステルを打った後のヘッドと蓋の色差を見ると白くなっている。

 だがまだまだ物足りない。

 ここでまた一つの叡智を拾い上げる。
 『エアブラシでの黄変カバーは下地に青や緑を入れることで自然な血色により近づく!』
 なるほど。

 こと衝動というものにおいては加減というものを知らない私はプラモ用品の揃った店に駆け込む。手に取ったのはイージーペインターと水性ホビーカラーのスカイブルーとホワイト。

 それがこうして

こうして  こうなった。

 どうしてこうなった

 いや元はと言えばヘッドの黄変カバーをパンパステルで頑張った結果ボディの黄色さにヘッドが浮きボディを買えようと新しく手に入れたDreamValleyのボディ(今は天使のビロードに使用している)を嵌めたら黄変カバーをどんなに頑張っても今度は顔が黄色くて困って白くしたかっただけなんだ。それだけなんだ。

 結局真っ青になったヘッドに真っ白なボディが似合わないのでボディをフル塗装。作業中に使用したカラーの数や替えのスプレー数知れず。水性カラーと艶消しの材質が合わず溶けたり関節のかみ合わせが塗膜の暑さで阻害されて塗装が剥げたりいろんなことがあったが、人のビロードは無事に鬼子めいたビロードとして生まれ変わった。

 この頃から作成キットを使ったアクリルアイ作りに飽きレジンアイを自分で作ろうといろいろな技法を試していた。この小さすぎる虹彩のアイもその功名。この悪魔じみた目つきが気に入ってる。

 最近はエナメル塗料の扱いも心得てきたので手足の塗装をモデルカスカンの濃血レッドにて。かなりキョンシー的なイメージが付いてきたので中華服にボークスの中華靴を履かせたら青・白・赤のカラーバランスが非常に良くなった。気に入っている。

 この角も少しいじってみてもいいかもしれない

 という経緯で生まれたのがこのビロード【人間性】である。
 何故伏し目造形の天使のビロードの人間性を特に目が大きなこはく/ひすい造形でしたのか。それは、ブーン系的解釈におけるビロードの「かわいさ・あざとさ」を表現したかったからに他ならない。
 自分の可愛らしさを理解して立ち回る狡猾さ。あるいは、幼く弱弱しい姿の中に狡猾な知恵を秘める凶暴性。その身の幼さや可愛らしさの中に秘められた危険性。それを表現するには大きく開かれた目、そして異様な姿、凶暴な目……そしてなにより、天使のビロードよりも泥臭く人間臭くなくてはいけない。
この【人間性】のビロードを作成するうえで初めてSDのヘッドにメイクをしたわけだが、独特の造詣や経年劣化も相まってビロ―ドのメイクの変遷は多岐にわたった。
それこそフェイスパーツひとつとっても数回書き直されたことのあるユノアクルスのニュッくん並みにメイクを変更していた。

初期がこれ。届いてすぐにピューロランドに行く用事がありどうしても連れて行きたかったので突貫で工事。上の瞼を白にしたかったことだけ覚えているが筆がめちゃくちゃ荒い。

二番目。お迎えセレモニーを実際のビロードの誕生日に行うことを最優先に最初のメイクをオフし再メイク。下まつ毛の描画が雑。

三番目。この辺りから黄変カバーやボディ換装をしているがかなりあざとさを意識したメイクになっている。相変わらず下まつ毛の描き方に悪い癖が出すぎている。

 そして現在のメイクがこれだ……と思って写真を載せようと思ったら載らない!見出しの限界らしい。とりあえず記事の冒頭を参考にしてください。
 このメイクを変更するという事はまたこのクソめんどくさいフェイスの塗装から始めなくてはいけないという事なので、これ以降変えるつもりはない。よっぽどなんかない限りは……。
 PeaksWoods的なリップに遊びを入れたメイクやシンプルに長さを追求した下まつ毛、アイラインは邪悪な表情を強調させるギミック的な造形にしてアングルによる表情変化を実装。
 ボディとのカラーバランスを考えながらのメイクには海外ドールの異色肌ドールのヘッドメイクを大いに参考にいた。普通キャスト自体に色が付いたドールは追加料金を取られるのが常だが、これを経験してしまうと塗装で好きな色のボディを作るのも悪くはないんじゃないかと思うようになった。いや関節が掠れて塗装が剥がれて膝とか結構ボロボロだけど……。

 かくして鬼めいてかつあざとくこちらに媚を売るような姦しさと邪悪さと可愛らしさを秘めたビロードは完成した。個人的にMSDボディのふくらはぎの造形はSDMボディのものより人間臭くて気に入っているのと、同を中心とした文化帆方式は重心が取りやすく細かなポージングに感情が乗せやすくて気に入っている。単関節だってそう悪くはないよ。

 ウィッグはあえて髪に癖の付いたタイプのものを使用しカットして調整済み。この辺りから使うウィッグは自分で切って調整するようになった。空きバサミも買った。

 ドール一人を理想の形にするために必要とされる技術を手にするために挑戦と好奇心と「やったらやれるか」の精神は可能性を実現させるにおいて何より必要なものだとしみじみ感じた相手だった。為せば成る!為せば成る!
 

 次が最後のビロードの話になる。
 ただ、最後のビロードは【人間性】のビロードより技巧を凝らしているのでめちゃくちゃ未完成だ。泣きたくなる。年内に完成するかもわからない。助けてくれ。

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