硝子の中で

硝子の中で

瑠眸と芒彙

瑠眸を語るには芒彙くんが欠かせないし、また芒彙くんを語るには瑠眸は必要不可欠である。これは、二人の青年ドールをお迎えした記録。

秋口のある日、店頭に並ぶ青い蝶に魅入られた。青い蝶は白昼夢を漂い、気紛れに人間の前に姿を現したのだろう。
後に瑠眸と名付けられるその蝶が、どのような気持ちで硝子の箱から飛び立ったのか。ただ一つ、白昼夢に向かい人間が呟いていた言葉を聞き逃してはくれなかったのだ。

先住の小さな悪魔や気高い猫。決して静かになる事のない、小さな部屋。それでも瑠眸は寂しそうに遠くを眺める。
幾月が過ぎ、彼が未だ店頭に居座っている事を知る。

そんな馬鹿な事がある筈が無い。

けれども心の何処かで分かってしまった。あの日の約束を、違えるつもりは無いのだと。
何度も人間を急かした。

彼のような素敵なドールに、持ち主が現れない筈が無い。

瑠眸の勘は当たっていたのだろう。穏やかな白昼夢は箱に籠り、人目を避けるように店の奥に居た。
迎えに来たよ。

あの少年は幸せか?

そう、人間を睨み付ける。
心配なら、その両目で確かめるかい?

今日も二人は穏やかな時を過ごす。もう二度と、離れ離れにならないように。

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